インコも病気をしないのが一番ですが、長生きするインコだからこそなにかしらの病気を経験するものです。
病気にも私たちと同じように「風邪」という一般的なものから、命にかかわるようなものまで様々です。
この記事ではインコの飼育で経験しやすい病気とその原因・症状・対策・治療の参考になるようにまとめました。
ただし、病気を自己判断で勝手に診断し、安易に自然治癒させようとすると取り返しのつかないことになりかねません。
あくまで参考にするまでとし、動物病院を受診してしっかり治療することが大前提です。
どんな病気でも適切な保温や栄養バランスの良い食事などは必要となるので、対策としては割愛している部分もあります。
呼吸器系の病気
呼吸器系といえば一般的鼻炎や風邪のような症状が思い当たりますね。
鼻炎
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・鼻粘膜への細菌感染
・異物の吸い込み
・くしゃみ
・鼻孔・ろう膜の発赤
・鼻水、鼻づまり
・口呼吸
・ろう膜の汚れ
・抗生剤投与
免疫力が落ちないよう保温と休息を心がけ、栄養バランスの良い食事にする。
副鼻腔炎
服鼻腔は複雑な構造をしており、治療に時間を要することもあります。
鼻炎を併発しない場合は気付きにくいため悪化しやすい病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・細菌感染
・鼻炎の悪化
・違和感から顔を振る
・顔を擦り付ける
・口臭
・眼周囲の腫れ

参考:仙台小鳥動物病院.com
・抗生剤投与
・鼻腔洗浄
・手術することも
免疫力が落ちないよう保温と休息を心がけ、栄養バランスの良い食事にする。
下気道部疾患
下気道部とは喉から肺までの空気の通り道で、人間でいう気管〜気管支にあたるでしょう。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・細菌・真菌感染
・ビタミンA不足
・刺激性ガスの吸い込み
・咳
・声や呼吸音の変化
・呼吸困難
・原因に合わせた薬剤投与
・吸入薬の使用
保温と安静をしながら栄養バランスの良いエサを与える。
クラミジア症
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・クラミジアの感染
下痢や緑色便、口内炎、その他様々な症状が起こり、症状は個体差があります。
・抗生剤投与
・症状に合わせた治療
・保温と休息
・栄養をしっかり取らせる
その他、感染するため他の鳥との隔離やお世話後の手洗いが必須です。
消化器系の病気
インコは食べたものをすり潰す器官があったりと、人間とは違う構造のため、あまり見たこと・聞いたことがない症状が多くあったりします。
食滞
食道にある「そのう」に食事などが停滞することで起こりますが、その他の情報をみてみましょう。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・幼鳥期にエサを与えすぎる
・温湿度不良環境での飼育
・食道や胃の閉塞
・前胸部の腫れ
・前胸部が硬くなる
・食欲の低下、衰弱
・消化器系治療薬投与
・そのう内のエサ除去
普段から「そのう」部分を触れ、腫れや硬さがないかをチェックします。
そのう炎
ヒナの時期に起こりやすいのがそのう炎です。
そのうは食物を溜め込みますが、消化液などは出ないので雑菌などが繁殖しやすい特徴があります。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・細菌やウイルス感染
・食滞
・免疫力低下
・嘔吐
・食欲低下
・痛で首を伸ばす
・抗生剤投与
その時の状況で与えて良いエサを獣医にアドバイスしてもらいましょう。
総排泄腔脱
総排泄腔は「クロアカ」とも呼ばれます。
正確には違いますが、人間で例えると脱腸(痔)のようなものです。
産卵後のメスがこの状態になりやすいです。
早めの処置をしないと総排泄口が壊死することもあるので要注意です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・産卵後等総排泄腔が反転しやすくなる
・総排泄腔の脱出
・痛み
・食欲不振
・衰弱
・脱出部の壊死
・抗生剤投与
・軟膏塗布
・総排泄腔を押し戻す
総排泄口が赤くなってないかチェックし、異常があればすぐに動物病院を受診します。
腸炎
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・腸管内のウイルスや細菌感染
・悪くなったものを食べる
・重金属や薬など刺激性のあるものを食べる
・腸粘膜の炎症により嘔吐や下痢
・食欲不振
・羽を膨らませる
・腹痛で腹や地面をけるような行動
・症状に合わせた治療
・食事の衛生管理
・飼育環境の見直し
マクロラブダス(メガバクテリア)症
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・真菌感染後免疫力低下して発症
・親からヒナへの感染
・胃炎や消化不良による嘔吐に食欲低下
・黒い血便
・吐血
・衰弱
・抗真菌剤投与
弱って症状が出現するため、早めや定期的な健康診断をおすすめします。
カンジダ症
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・カンジダ菌の感染
・長期の抗生剤投与
・加熱した炭水化物の摂取
・ビタミンA不足
・免疫力低下
感染しただけでは発症しないこともあります。
抗生剤投与で特定の細菌がいなくなりカンジダが増加したり、免疫力低下により発症します。
・下痢
・嘔吐
・活動性低下
・抗真菌剤投与
・栄養バランスの良い食事
・ストレスの少ない環境
・充分な休息
トリコモナス症
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・トリコモナス寄生虫の感染
・不衛生な飼育環境
口腔・食道・そのう・副鼻腔・目など多くの場所に感染するため症状は多岐にわたります。
おかしな行動をとったりします。
・抗原虫薬の投与
・飼育用品の消毒・洗浄
・多頭飼育なら感染予防のため隔離
・飼育環境の見直し
泌尿器系の病気
腎不全
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・腎臓の機能が低下することで発症
・脱水
・尿路閉塞
急性腎不全なら
・急激な衰弱
・多尿もしくは乏尿
慢性腎不全なら
・足を引きずるような行動
・足を上げるようになる
・原因に合わせた治療
・食事療法
・暴飲暴食を避ける
腎疾患
腎不全も腎疾患の一部ではありますが、腎不全以外の症状なども紹介します。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
さまざまな原因により腎臓が働けなくなる
・呼吸困難
・腹水(腹が膨らむ)
・血便
・原因に合わせた治療
・栄養バランスの良い食事
・中毒性のあるものを口にさせない
痛風
痛風にも内臓痛風と関節痛風の2種類があります。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・加齢
・高たんぱくな食事
・腎不全
・血中尿酸の蓄積
内臓痛風の場合
・突然死
・突然死前には腎不全の症状も
関節痛風の場合
・足にできもの
・足の痛みで片足立ち
・足を引きずるような行動
・尿酸値を下げる薬
・食事療法
・充分な水分摂取
・栄養バランスを考えた食事
その他、内科系の病気
肝臓疾患
人間の肝臓同様にインコの肝臓は多くの働きを持ちます。
そのため肝臓疾患では多くの症状が出ます。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・さまざまな病気の影響を受ける
・肝臓の炎症
・肝臓の機能低下
・黄色の尿
・羽色が薄くなる
・その他羽色の変化
・くちばしの伸び
・くちばしの奇形
・爪の伸び
・腹が膨らむ
・嘔吐
・下痢
・体重減少
・原因に合わせた治療
・食事療法
エサなどの飼育環境を獣医師へ報告し、改善点などアドバイスをもらいます。
糖尿病
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・遺伝
・肥満
・膵臓疾患
これらにより血糖値が高くなる。
・多飲水や多尿
・過食
・突然死
・血糖値上昇
血糖値が高い原因が特定できれば原因に合わせた治療をしますが、原因がわからないことも多くあります。
その場合は血糖値を下げる対症療法を行います。
・親に糖尿病がないかチェックしておく
・栄養バランスの良い食事
・適度な放鳥で運動
膵炎
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
ウイルスや細菌感染、十二指腸炎や腹膜炎を起こした後に発症することがあります。
膵臓はインスリンや消化酵素を分泌する臓器なので、糖尿病や腹痛など様々な症状が出ます。
・症状に合わせた治療
・脂質やタンパク質を摂りすぎず、栄養バランスの取れた食事を心がける。
生殖器系の病気
卵塞(卵の詰まり)
産卵時に卵が詰まって出てこない病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・ビタミンやカルシウム不足
・日光浴が不十分
・初めての産卵
・過剰な産卵
・痛みでうずくまるような体勢
・腹部が固い
・食欲低下
・元気がない
・呼吸が早い
・羽を膨らませる
・カルシウム剤の注射
・獣医による排卵
・開腹手術
・栄養バランスの取れた食事
・定期的な日光浴
・発情過多を予防する
・腹部状態のチェック
卵肝炎
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・細菌などの感染
・卵塞
・卵管腫瘍
腹痛によりお腹をけったり噛むような行動をします。
・全身状態の悪化
・抗生剤投与
・鎮痛剤投与
・腫瘍や詰まりが原因なら手術
・飼育環境の見直し
・発情過多の予防
卵管脱
卵管の収縮運動に異常が起こり、卵管が外に出てくる病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・卵管収縮運動の異常
・初産や過産卵のインコの卵塞後に起こりやすい
・お尻から赤いものが見える
・痛みによる食欲不振
・羽を膨らませる
・突出した卵管の壊死
・衰弱
・抗生剤や化膿止めを塗布して押し戻す
・発情抑制剤の投与
・卵管摘出をするケースも多い
・過発情を防ぐ
・すぐに病院受診を
・乾燥しないよう生理食塩水で濡らしたガーゼで保護
嚢胞性卵巣疾患
卵巣に液状のものが溜まった袋(嚢胞)ができてしまう病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・ホルモン分泌の異常
・発情過多
・腹が膨らむ
・嘔吐
・便秘
・呼吸困難や咳
発情抑制薬の投与で一時的に嚢胞を小さくすることができるが、根本的な解決にはなりません。
卵巣をすべて摘出することは難しく、一部摘出する手術をしますが、残った卵巣に再発することもあります。
・発情のコントロール
栄養・代謝系
くる病
栄養バランスが乱れた環境で成長することで起こる病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
カルシウム、リン、ビタミンD3などの不足が原因です。
・骨のゆがみ
・成長が遅れる
・くちばしが小さく曲がる
・O脚
・骨折しやすい
・初期段階なら不足している栄養を補うことで悪化を防ぐ
・すでに骨の変形があれば治らない
ヒナの段階からカルシウムやリンも含め、栄養バランスのとれた食事を与えます。
パウダーフードを与えればくる病は予防できます。
脚気
ヒナをアワダマで育成する場合に発生しやすい多発性の神経炎です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・ビタミンB1の欠乏
・足のマヒ
・翼の垂れ下がり
・翼の震え
・食欲低下
・口呼吸
・けいれん発作
・ビタミンB1の投与
ヒナの育成ではアワダマではなく、栄養バランスの良いパウダーフードを利用する。
ビタミンA欠乏症
シード食で青菜やサプリメントを充分に与えられていないインコに好発します。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・ビタミンAの原料となるβカロテン不足
臓器表面や皮膚形成異常を起こし、眼・呼吸器・消化器など多くの場所にさまざまな症状が現れます。
・涙管閉塞
・呼吸器系疾患
・腸炎や腎不全
・痛風
このように多くの病気の原因となります。
・ビタミンA投与
シード食なら鳥用のサプリメントでや野菜でβカロテンを摂取し、ビタミンAが不足しないように心がけます。
もしくはペレット食に変えて栄養バランスが取れた食事にしましょう。
ペローシス(腱外れ)
カルシウム欠乏症
エサからのカルシウムや日光浴が不十分な場合に起こりやすい病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・カルシウム不足
・過産卵や過発情でカルシウム消費が多い
・日光浴不足
・足を引きずるような動作
・けいれん
・足のマヒ
・卵殻が柔らかい
・卵塞の原因にも
・カルシウム剤の投与
・ペレットなど栄養バランスの良い食事
・充分な日光浴
羽毛・皮膚の病気
自咬症
インコの問題行動としてもみられる病気です。
死に至ることもあるので早めの対応をしましょう。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・生理的な要因
・精神的ストレス
・皮膚疾患
・腎不全による皮膚のマヒ
・何らかの付着物がある
上記のような場合に刺激を除去しようとし、結果的に皮膚を傷つけることになります。
・皮膚を傷つける
・傷の化膿
・血管損傷により時には出血多量
・エリザベスカラーの着用
・対症療法
傷には抗生剤・消炎鎮痛剤の塗布、かゆみがありそうならかゆみ止めなど症状に合わせた治療をします。
痛そう・かゆそうなそぶりがあれば病院を受診しましょう。もしくは原因が除去できるようであれば対処します。
インコが安心して生活できる環境を整えて精神的ストレスをかけないようにします。
またケージも清潔にしてかゆみが出ないようにしましょう。
ウイルス性羽毛疾患
セキセイインコやヨウムが発症しやすく、ウイルスによる病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・ウイルス感染
・羽毛の変色
・羽が抜ける
・食欲不振
・嘔吐や下痢
・免疫不全
・突然死
・有効な治療がなくウイルスの増殖を抑えるしかありません。進行を防ぐ治療をします。
・他に感染しないよう隔離する
カイセン(疥癬)症
疥癬症はダニの一種であるトリヒゼンダニを媒介する感染症です。
セキセイインコに発症することが多く、症状が特徴的で異常に気付きやすい病気です。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
トリヒゼンダニの寄生
・寄生部位の変形
・かさぶたのようなものができる
・痒み
・寄生が広がると死亡することも
・駆除薬の投与を数回繰り返す
・感染するため隔離する
・予防のためにケージ内を清潔に
趾瘤症(バンブルフット)
趾瘤症はバンブルフットとも呼ばれ、足の裏に起こった皮膚・皮下組織の異常や感染のことです。
- 原因
- 症状
- 治療
- 対策
・肥満
・止り木サイズが合ってない
・ビタミンA不足
・運動不足
・趾(あしゆび)の先や足裏の腫れ
・腫れた部位からの出血
・患部の細菌感染
・対症療法
・止り木の変更
栄養バランスの取れた食事にし、適切な止まり木を準備しましょう。
止まり木の選びかたが分からないときは獣医へ相談しましょう。
ケージを掃除する時には止り木も清潔にします。